クリスチャン・ディオール デューン(レディース版) Dune

香水レビュー

クリスチャンディオールのデューン。

90年代を語るにあたって、ハズせない作品の一つですよね。

なぜかこの作品は、極端に暑い時期、または極寒の時期にまといたくなってしまいます。

1991年の発売ということもあり、いまの若い人にとっては“古典的な作品”の一つになるでしょう。

ある世代以上の方にとっては、“バブルの終わりを告げる香り”かもしれませんね。

時代を越えて存在し続けて欲しい名香です。

今回は、クリスチャン・ディオールのデューン、レディース版のオードトワレをご紹介していきます。

デューンの香りは?

デューンの香りは、バルサミックなウッディーノート。

サンダルウッドなどの樹木そのものの香りと、ベンゾインなど樹脂が織り成す、ウッディー系らしい奥深く、ほんのりと甘い香りが印象的です。

デューンは、オリエンタル系に分類される例もしばしば見られます。

ちょっと嗅いだだけでは何の香りが際立っているかがわかりにくく、複数の樹木の香りがほかの香料と混ざり合い、デューンの香りとして確立されていると思います。

デューンの香りの構成

トップノート:マンダリンオレンジ、アルデハイド、ピオニー、ベルガモット、ローズウッド

ミドルノート:ユリ、ジャスミン、イランイラン、ローズ、ニオイアラセイトウ

ベースノート:オークモス、サンダルウッド、アンバー、パチュリ、ムスク、ベンゾイン、バニラ

調香師:Jean-Louis Sieuzac(ジャン=ルイ・シュザック)、Nejla Barbir(ネジラ・バルビル)

一つひとつの香料を際立たせるというよりも、作品の世界観を描くように調香されたデューン。

トップノートのマンダリンオレンジと、ベルガモットはわかりやすいのですが、そのほかに続く香料は、どれが主役というわけでもないのです。

前衛的なモダンバレエを観ているかのように、個ではなく、作品全体へと意識が向かいます。

ミドルノートでさえ、フローラルとは呼び難く、文字通りベースノートのウッディーに華を添えるような役割に徹します。

そう、デューンの主役はベースノートの樹木由来の複数の香料、アンバー、そしてオークモス。

これほどにウッディー、ウッディーしているのに、男性用フレグランスのようなドライダウンにならないところが不思議です。

フローラルでもなくフルーティーでもない、ましてやグルマンでもないのに、魅力的な女性がそこにいるのを感じます。

そして酷暑の時期には極めてドライに、そして極寒の季節にはぬくもりを感じさせてくれます。

木でできた家屋が四季を通じて過ごしやすいことに、なんだか似ているように思います。

香りの強さは?

デューンの香りは強く、朝まとえば、夜まで付け直しをしなくても充分に香りが残ります。

オードトワレでも、オードパルファムと同じくらいの香りの持続性があると思います。

とはいえ、キツい香りではないのです。

デューンを知っている人なら、すぐにデューンとわかる個性的な香りでありながら、充分に熟成した古酒のように、まろやかにやわらかく香ります。

デューンは古くさい香り?

1991年の発売ということもあり、現在生存している幅広い年代の“大人たち”にとってメジャーな香水の一つになっています。

91年当時の20代、30代の女性にとっては、自分が若い頃を思い起こさせる香りというわけです。

香りそのものは現在でも個性的ですし、流行り廃りで古くなっていくタイプの調香というわけでもありません。

むしろ、この時代を知らないあなたが新しくまとうには、何の問題もない作品です。

ドライでバルサミックなのに、女性を美しくセンシュアルに魅せてくれるユニークな調香でもあります。

若い方にも是非トライしていただきたいな、と思います。

余談ですが、私がデューンを初めて買ったのは高校生の時でした。

その時、すでに有名な香水だったデューン。

ドライダウンの香りが大好きで、背伸びするようにしてまとっていましたが・・・果たして、デューンが似合う理想の大人になることはできたのしょうか?

このレビューを書きながら、そっと自分自身に問いかけます。

ジャン=ルイ・シュザックをめぐる謎

デューンの調香師は、ずっとジャン=ルイ・シュザックのはず・・・でした。

ところが、現在のクリスチャン・ディオールの公式サイトを見ると、彼の名前はありません。

この現象はラルチザンパフュームでも起こっていて、ミュール エ ムスク エクストリーム(オードパルファム版)の調香師だったはずの、彼の名前は消えているのです。

ラルチザンパフューム ミュールエムスクエクストリーム MURE ET MUSC EXTREME
黒いちごの果汁を感じるような甘酸っぱさと、上質なシルクのようにやわらかいムスクが出会った、今までにないフレグランス。 「ミュールエムスク(黒いちごとムスク)」オードトワレが誕生したのは1978年です。 かつて表参道に立地していた...

考えられる理由(あくまで考察)

これは、あくまで私の推測です。

シュザックが使っていた香料の何かが使えなくなった、という仮説です。

香料に関わる規制は厳しくなっています。

天然由来のものであれば、動植物の保護、あるいは温暖化による天然素材の高騰が理由に挙げられます。

合成香料の場合は、人体や地球環境へ何らかの影響を及ぼさぬよう規制が厳格化しており、新たな素材が生まれにくい状況にあるようです。また、後になって使用が禁止されてしまい、使えなくなった素材も。

私の中では、デューンを構成していた原料の何かが高騰し、私たち消費者向けに販売される際の製品価格との採算が合わなくなったといったところかと。

通常であれば、代替品による調香のやり直し(=処方変更)も、作った調香師が行うものでしょうが・・・何らかの理由で、シュザック本人はこれを行わなかったため、処方変更をした現役の調香師の名前が記載されている・・・といった推測です。

ちなみに、処方変更そのものは、香水の世界ではよくあることです。

以上、これは推測なので、ま〜ったく違う理由がある、のかもしれませんが・・・

デューンのラインナップ

デューン オードトワレ

現在、入手できるデューンは、オードトワレのみとなっています。

かつては、バスライン、ボディケアアイテムも揃っていたようなのですが・・・

オードトワレが存在し続けていることに感謝しつつ、これからも長く愛される香りであればいいなと思います。

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