フランス語で「究極のちょうちょをつかまえて」という名前を持つ、詩的な香水。
私にとって、これは運命の香水です。
この香水との出会いが、このブログを始めるきっかけの一つになりました。
それは、私のもとにやってきた香りのちょうちょのよう。
以来フレグランスメゾンと呼ばれる香水専門のブランドに興味を持つこととなり、今まで手に取ることのなかったさまざまな作品との出会いが広がるようになったのです。
究極のちょうちょをつかまえて(ラルチザンパフューム)
LA CHASSE AUX PAPILLONS EXTREME(シャッセ オ パピオン エクストリーム)オードパルファム
シャッセ オ パピオンの作品の舞台は、夏の花があふれる庭。
朝や日中ではなく、作品の時間帯は美しい夕暮れ時です。
花々が咲き乱れる夏の庭園で過ごす、とっておきの夕暮れ時をイメージさせてくれそう。
心がふわっと軽くなり、気がついたら、ちょうちょになって、素敵な花園を飛んでいた…
まさに、そんなストーリーが似合う、素直で上品な香りなのです。
香りの特徴は?
日本の夏とは異なり、湿度が低くカラッとしたフランスの夏を思わせる、軽やかさが特徴となっています。
そんな夏の、夕方のイメージというコンセプト通り、単に明るいだけではなく、どこかメロウな雰囲気も感じられます。
シャッセ オ パピオンの香りについて
ラルチザンパフュームの公式サイトには、入っている香料や詳しい説明が書かれていました(リニューアル前の公式サイト)
究極のちょうちょをつかまえて
ホワイトフローラルにスパイスや蜂蜜を重ね、咲き乱れる花々と夕日に染まりゆく庭園の美しさを表現。ときにフェミニンに、ときにエレガントに、そして、ときに可愛らしく―。甘美にうつろう香りは、すべての女性の憧れ。ラストはチュベルーズとイランイランが濃厚で甘美な余韻を残します。
香調タイプ / スアーヴ フローラルブーケ
ヘッドノート / ピンクペッパー、サフラン、オレンジブロッサム
ハートノート / ジャスミン、菩提樹、チュベルーズ
ベースノート / チュベルーズ、バニラ、ベチバー、イランイラン
調香師 / アン・フリッポ
出典:ラルチザンパフューム公式webサイト(リニューアル前)
香調について
スアーヴとは、穏やかで上品なといった意味ですね。
シャッセ オ パピオン エクストリームは、まさに、洗練されたホワイトフローラルブーケのお手本のような香水です。
ジャスミン、チュべルーズ、イランイランといった、この香水のメインとなる白いお花の香りを引き立てるように、ピンクペッパーのアクセントが効いています。
ピンクペッパーは、フローラル系の香水と相性が良く、トップノート(ラルチザンではヘッドノートと称しています)に用いられることが多い香料の一つです。
瑞々しい甘さの中にちょっぴり苦味を感じるオレンジブロッサム(オレンジの花)を感じていると、サフランやジャスミン、チュべルーズ、イランイランといった濃厚な甘い花々が次々と誘います。
サフランの香りの「効能」について
カネボウ化粧品・スキンケア研究所は、奈良教育大学・福井一教授との共同研究により、サフランの香りが女性のストレスを緩和し、心を安定させ、さらに女性ホルモンの分泌を高めることを確認しました。この成果により、今後は、サフランの香りの新たな応用が期待できます。
※カネボウ化粧品の研究成果から
このように、サフランは、女性にとってストレスの緩和や女性ホルモンの分泌を高めるといった作用が実証されているようですね。
この香りを纏うと、心が軽くなるようなポジティブな気分にさせてくれるのは、サフランの効果かもしれません。
ベースノートについて
ベースノートにベチバーが入っているため、単に軽やかなだけではなく、香りに深みと奥行きを感じさせます。
これにより、シャッセ オ パピオン エクストリームが少女のためだけの香りではなく、香水を使い慣れた大人の女性や、男性が纏っても違和感を感じさせない香水に仕上がっています。
ウッディ系の香料が加わることにより、香りの持続時間を高める効果もあるようです。
2つのシャッセ オ パピオン
実は、シャッセ オ パピオンには、この「エクストリーム」(オードパルファム)と、何も付かない「シャッセ オ パピオン」の2つのバリエーションがあります。
ちなみに、何も付かない「シャッセ オ パピオン」(オードトワレ)が先に発売されたもので、いわゆる元祖バージョンです。
当初は夏季限定のフレグランスだったのですが、人気が高かったため、レギュラー商品となったのが「シャッセ オ パピオン」(オードトワレ)です。
オードトワレのシャッセ オ パピオン
ちょうちょをつかまえて
南仏の太陽がそそぐ夢の庭園を舞う蝶々を追いかけて―。ジャスミン、オレンジフラワー、チュベルーズが生き生きと香るフローラルフレグランスのベストセラー。みずみずしく咲き誇る花々がフェミニンで可憐な魅力を引き立て、ラストは菩提樹の花が甘美な余韻を残します。
香調タイプ / フレッシュフローラルブーケ
ヘッドノート / ベルガモット、ライムブロッサム、ピンクペッパー
ハートノート / オレンジブロッサム、チュベルーズ、ジャスミン、菩提樹
ベースノート / チュベルーズ、イランイラン
調香師 / アン・フリッポ
オードトワレとオードパルファムでは、メインとなる香りには、ほぼ同じ香料が使われているようです。
「エクストリーム」がオードパルファムであり、賦香率(香料の濃度のようなものです)も高いことから、より多くの香料が使われている様子がわかります。
オードトワレ版には、ベースノートにバニラとベチバーが含まれていないことからも、ライトな仕上がりとなっていることが伺えます。
バニラもベチバーも、香りの持続時間を高める作用が知られています。
「シャッセ オ パピオン」(オードトワレ)では、物足りないの?
オードトワレの「シャッセ オ パピオン」は、香水として不足しているかというと・・・。
私の答えは「NO」です。私も大好きな香水の一つです。
どちらを選ぶかは、纏う方の目的に拠ると思います。
(ちなみに、私は両方ともにストックしています)
「シャッセ オ パピオン」(オードトワレ)を使いたい時
「シャッセ オ パピオン」(オードトワレ)は、より生花の花束が持つライブ感を感じさせます。
まるで、さっき庭園で花を摘んできたばかりといった新鮮なお花の香り。
私がオードトワレ版を使うのは、こんな時です。
- 香りでリフレッシュしたい時
- ずっとオフィスに篭っている時
- 曇りや雨など、天気が悪く気が沈む時
この香りを纏うと、明るい日差しのある庭園にいるような、アップリフティングな気分になれるのです。
ちなみに、フレッシュさを追求したがゆえに、持続時間は短く感じられます。
持続時間の違いで選んでみる
持続時間も大きな違いと言っていいでしょう。
- オードパルファムの持続時間:5時間前後
オードトワレの持続時間:3〜4時間
香水の種類の違いについては、当ブログのコチラの記事も参考にしてみてくださいね。
シャッセ オ パピオンの場合、体温が高い人では、オーデコロン並の1〜2時間ほどの持続時間で香りが飛んでしまうかもしれません。
その軽さが夏の思い出のように可憐な印象を与えてくれるようです。
この儚いところが、オードトワレ版の魅力を高めているように思えます。
結論
「シャッセ オ パピオン エクストリーム」(オードパルファム)は、「ちょうちょをつかまえて(シャッセ オ パピオン)」のコンセプトを、より作品として進化させた香水と考えられるでしょう。
ベチバーやバニラといった香料が加わることで、全体に深みが出て、オードトワレでは表現し切れなかった複雑なニュアンスや、洗練さが生まれています。
「ちょうちょをつかまえて」オードトワレ版は、生花のフレッシュな香りが表現され、ナチュラルに仕上がっている分、ライトな香りです。
こまめな付け直しがむずかしく、香りを長く楽しみたい場合は、オードパルファムを選ぶといいかもしれません。
オードパルファムの上にオードトワレを重ねる、ぜいたくな重ねづけもオススメです。
オードパルファム版への感想
私には、オードパルファムには、調香師の回想や、感情が入っているかのように感じます。
これは私の想像ですが、シャッセ オ パピオンが描き出す夏の庭園は、調香師の子ども時代の思い出ではないでしょうか。
夏の庭園で過ごしたとっておきの夕暮れ時を思い出す、大人の自分。
これをずっと記憶に留めておきたいという切なさと、もう、その時には戻れない、大人になってしまったという苦味のような感情です。
日が暮れるまで自然の中で遊んだ無邪気な子ども時代の幸せな記憶を確かめ、今日の歩みを進めていく今の自分。
花々の香りとともに、めくるめく魅惑の花園をめぐっていくと、忘れかけていた大切な気持ちを思い出すことができるような気がします。