グルマン(gourmand)は、フランス語で「食いしん坊」の意味。
香りの世界の「食いしん坊」は、一体どんな香りなのでしょうか。
グルマンノートとは?
食いしん坊の香り、いったいそれはどんなものでしょうか。
グルマンノートは、お菓子・スイーツにヒントを得た、お砂糖やクリーム・ミルク、スパイスやチョコレートなどを使った甘いお菓子のような香りを指しています。
食べ物全般の香りではないため、ステーキの香りや、揚げたてのフライドポテトといった香りは含まれていません。
そもそも、そんな香水はメジャーではありませんが…
グルマンノートの雰囲気は?
グルマンノートは、スイーツのような甘さが際立つので、かわいらしい雰囲気が特徴です。
思わず笑顔がほころぶような幸せ感を演出したり、お菓子を食べている時のようなリラックスした気分に似合う香調となります。
グルマンノートとオリエンタルノートの違い
以前、当サイトでオリエンタルの香調をご紹介した時、少しだけグルマンにも触れたことがありました。
オリエンタルノートは、スパイスや木の香りが主役であり、どちらかというとクールな雰囲気、神秘的な印象を演出したい時に選びたい香調です。
グルマン系がぴったりハマる季節は?
私にとっては、寒さを感じる頃になると、恋しくなるのがグルマンの香りたちです。
バニラやキャラメル、プラリネといった濃厚な甘さは、寒く乾燥した季節によく合います
ちなみに、グルマン系の香りは、ロシアではとても人気があるそうです。(談:知人の香水ショップスタッフの方)
やはり寒い地域で好まれる香調なのですね。
夏はどうする?グルマンノートのまとい方
一方、日本の夏は、気温だけでなく湿度も高いため、グルマン系の香りは重く感じられることも。
夏場は肌の露出も増え、日本の一般的な趣向では、夏季はどちらかというと爽やかな香りが好まれます。
お部屋で楽しむのならともかく、夏の職場や公共の場では控えたほうが良いでしょう。
どうしても夏に使いたいという場合は、足首の外側だけに付けると、脈の位置を外れるため、香りが周りに広がりにくいですよ。
グルマン系のまとい方のコツは?
とろけそうに甘い、一瞬でハッピーになれるグルマンノートの香水たち。
使う上でのポイントは、ふわりと軽やかにまとうことです。
ヴァニラなど、もともとの香料が強く香るものが主となる場合、自分が想定した以上に強く香ってしまうことも。
また、甘い香りがTPOにふさわしくない場合もあります。
特に冬場は、長袖の服を着た後で、袖から出ている手首にだけパッとつけちゃう!な〜んて、やりがち。
手首は、腕を動かすことで周りに拡散しやすい部位です。
通勤に電車やバスを使う場合、特におすすめできない部位と言えるでしょう。
重ね着をして、肌と衣類が作る空気の層の中で、まろやかに甘く香らせて楽しむのも、冬だからこそ。
お腹や背中に、30センチほど離してワンプッシュ。タイツを履くなら、太ももの内側も◎
他人から見えず、衣類に覆われる部分にワンプッシュだけ吹付ければ、強い香りが拡散されすぎるのを防ぐことができます。
グルマン系の代表フレグランス10選
ティエリー・ミュグレー エンジェル
グルマンノートのパイオニアといえば、ティエリー・ミュグレーの「エンジェル」に他なりません。
意外にも香りはオリエンタルノート寄りで、甘さは控えめ。私はスパイシーさを強く感じました。
ティエリー・ミュグレーのエンジェルが放つ甘さは、ヨーロッパで売られているスイーツに例えるとわかりやすいです。
欧米の方が好むスイーツには、砂糖はもちろんたっぷりですが、スパイスをふんだんに用いたものが数多く存在します。海外のお土産のお菓子から漂う、なんとも言えない複雑な甘い香り…これをエンジェルにあてはめてイメージするとわかりやすくなります。
スパイスの要素で子どもっぽくならないところが、この香水が長く愛され続けているポイントかもしれません。
セクシーな側面もあり、大人の女性が使ってもハズしません。
年齢を重ねた女性がまとうことで、エンジェルの香りが持つ魅力もより引き出されるように感じます。
スパイシーさを省いた、ピュアな甘さを求めている人には、以下にご紹介するジルスチュアートのヴァニララストがおすすめです。
ジルスチュアート ヴァニララスト オードパルファム
香りだけでなく、ボトルやパッケージまでが統一された世界観を表現している、ジルスチュアートから。
その名の通り、ヴァニラの香りを存分に楽しめるオードパルファムです。
コロンとしたシンプルなボトルに入った、中身の黄金色の液体も美しく見えます。
インテリアとして、お部屋に置いておくだけでも気分が高まりそう。
この香水は、グルマン系が初めての方に特にオススメです。
コンポジションの中に、ヴァニラやキャラメルといった王道のザ・グルマンといった要素だけでなく、フルーティフローラルの一面もあるから取り入れやすく、季節やシーンを限定しません。
主体となる香りはヴァニラでも、ジャスミンやピーチといったお馴染みの香料が入っているので、使いやすいのではないでしょうか。
また、デザイナーのジルスチュアート自身が大好きな香りでもあり、女子が好きな要素をふんだんに詰め込んだ1本だと思います。
ジルスチュアートらしい、少女のように可憐な自分を演出することができそうですね。年齢を問わずにオススメです。
プラダ キャンディ オードパルファム
ショッキングピンクとゴールドの派手なパッケージが印象的な、プラダのキャンディ。
キャラメルの甘い香りに浸りたいなら、キャンディを選んで間違いないと言えるでしょう。
なんとなく元気がない時、寒い時期に気持ちがふさぐとき、パッとしない時にも、この香りが恋しくなりそうです。
キャラメルに加えて、ベンゾイン(安息香、あんそくこう)という、熱帯に生える樹木から摂れる樹脂からなる香料も使われています。
ベンゾインはアロマテラピーでも使われますが、オイルが透明ではなくキャラメルソースを煮詰めたような、蜜のようなとろみを持っています。
濃厚な甘さの中にも、どこか心を落ち着かせる香り。
ベンゾインの精油には心を鎮静させる作用があり、アロマテラピーでもそのような目的で使われるのです。
そんなことから、プラダ キャンディには、見た目も明るくテンションも高い元気な女の子だけれど、実はみんなの面倒見がいい姉御肌の女性だった、なんてストーリーをイメージしてしまいます。
3つめの香料には、ムスクが加わっています。
ムスクにより、この香水から若すぎる女の子という設定が外れ、大人の女性も使える香りに仕上がったように感じます。さすがプラダ!
ラルチザンパフューム ティーフォーツー オードトワレ
ラルチザンパフュームの隠れた人気フレグランス、ティーフォーツー(二人のためのお茶)は、その名の通りティータイムをイメージしたフレグランスです。
紅茶の中でもスモーキーなフレーバーを楽しめるラプサンスーチョンティーをモチーフに、ジンジャー、シナモンといったティータイムをイメージさせるスパイスの香りがあふれます。
ラストはぬくもりのあるウッディーノートへ。バニラとはちみつがぬくもりのある甘い余韻を残します。ティーフォーツーはラストノートで甘さが現れる、スパイシーノートとグルマンノートが同居したタイプです。
ラルチザンパフューム トラベルセ ドゥ ボスフォール(イスタンブールの空)オードパルファム
ラルチザンパフュームからもうひとつ。トルコのイスタンブールをイメージした香り「トラベルセ ドゥ ボスフォール」もまた、グルマン系の濃厚な世界観を楽しむことができます。
ラルチザンパフューム トラベルセ ドゥ ボスフォール(イスタンブールの空)オードパルファム
イスタンブールの路地裏に迷い込んだようなストーリーが香りで表現されていて、まとうだけで旅に出ているかのようです。
ヨーロッパで出会うお菓子を思わせる濃厚で甘いお菓子の香りは、海外旅行好きの方にはたまらないと思います。
このイスタンブールの空は、現在は入手が難しくなっている作品の一つです。
ディメータ— バニラケーキ バタ— オーデコロン
NY発のフレグランスメゾン、ディメーターのグルマン系香水からおすすめを一つ上げるなら、バニラケーキ バターです。バニラケーキにバターをとろりと垂らした瞬間をぎゅっと封じ込めたような、ユニークな香水です。
オーデコロンとして作られているので、甘い香りが強く続く心配はありません。
スイーツが自慢のカフェから出てきた後で、髪の毛や洋服についている甘い香り…そんなイメージです。
ゲラン モンゲラン オードパルファム
アンジェリーナ・ジョリーを起用したイメージビジュアルが印象的な、ゲランの現代的な作品・モンゲラン。いまっぽくて、強くしなやかな女性をイメージした作品だと思います。
ラストノートでバニラの香りが現れる調香となっていて、女性らしさの表現に柔らかさを与えています。
トップノートはベルガモットの柑橘系の香りです。ミドルノートではジャスミンやアイリスのフローラル系の香りがメインとなっており、最初から最後までバニラの香りを感じられるわけではありません。
バニラの香りの出方には、まとう人の体温などの個人差があると思いますが、大人っぽいグルマンノートを探している方にはぜひトライしてみてほしいです。
ジャンヌアルテス ブンブン キャンディランド オードパルファム
ジャンヌアルテス ブンブン キャンディランド オードパルファム
ブンブンキャンディランド、という遊びココロあふれるネーミングと、とびきりポップパッケージが印象的なオードパルファムです。
ジャンヌアルテスは香水の本場、フランスのメゾンでこのブンブンキャンディランドもフランスで製造されています。
欧米ではポピュラーなお菓子であるトフィーの甘い香りが特徴的です。トフィーは、バターやはちみつを使ったキャンディの一種です。
単なる甘いお菓子の香りを並べただけでなく、オレンジブロッサムやサンダルウッドといったフレグランスの王道となる香料も用いられています。ラストはコットンキャンディ(わたがし)とバニラで締めくくられます。
まさに、これぞグルマン、これぞキャンディランドですね。
サムライウーマン ドルチェバニラ オードパルファム
10代の頃、手作りスイーツにバニラエッセンスを振り入れていると感じた幸せな気持ちを思い起こさせてくれる、ドルチェバニラ オードパルファム。意外にもサムライウーマンシリーズの作品なのです。乙女心をわかっているメゾンですよね。
バニラやミルクなど、白をイメージさせる甘い香りが続くうっとりとしたオードパルファムです。
ジバンシイ リヴ イレジスティブル デリシューズ オーデパルファム
ジバンシイ リヴ イレジスティブル デリシューズ オーデパルファム
フランス語で「すてきな人生」というネーミングのオードパルファム、リヴ イレジスティブル デリシューズはジバンシィのオードパルファムです。
その名の通り、日々を楽しく過ごせそうな香りが特徴的で、グルマンとフローラルを合わせた香りでその世界観を表現しています。
トップはマドレーヌをイメージした美味しそうな香りとオレンジブロッサム。ミドルはローズがメインとなっており、ラストでまたグルマン系に帰ってくる構成です。
ラストノートはトンカビーンとバニラ、2つの甘い香りで幕を下ろす物語にうっとり。
グルマン系のレアフレグランス
グルマン系のレアフレグランス (1) ラ・カウティーバ フエギア1833
せっかくなので、珍しい香水も紹介したいと思います。
日本でも有名になりつつあるフレグランスメゾン、FUEGUIA 1833から、ラ・カウティーバです。
ブエノスアイレス発のFUEGUIA 1833では、アルゼンチンに因んだ香りが多数作られており、こちらもその一つ。
ラ・カウティーバ
みずみずしいカシスの香り、甘くリッチなバニラ。そして魅惑的なムスク。先住民に誘拐された美しいアルゼンチン女性、ラ・カウティーバに思いを寄せて。
出典:FUEGUIA 1833 日本の公式サイトから
美女が多い国としても知られるアルゼンチンで、誘拐されるほど美しい女性って、どんな方なのでしょうね?
このラ・カウティーバは、そんな美しい女性の首元をイメージして作られたのだとか。
スプレーしたての香り立ちは、新鮮なカシスを感じます。
このようにフエギアの香水は、みずみずしい香りの表現に長けており、植物がもつ本来の香りを思い出させてくれるようです。
やがて時間が経つにつれ、ふくよかなバニラに包み込まれるような、あたたかみのある香りに。
ムエットではわかりにくいですが、肌に乗せると、ムスクの香りがベースに存在していることがわかるでしょう。
秋から冬にかけて、人肌が恋しい時期にオススメの香りです。
まだまだ珍しいブランドということもあり、他人と被らないグルマン系を探している人には、ぜひオススメしたい一品です。
グルマン系のレアフレグランス (2) ショコアトル フエギア1833
FUEGUIA 1833から、もう一つ、グルマン系の香水をご紹介します。
その名も、ショコアトル。
名前からも、美味しそうな雰囲気が伝わってきそう。
チョコレートやココアの、甘〜い香りに浸りたいけれど、子どもっぽいのはちょっと・・・
そんな大人の女性にぴったりの、上質なグルマンです。
ショコアトル
温かいホットチョコレートへ、ラムを一滴隠し味に。それは甘いだけでなく、少し苦味がある大人の香り。
古代アステカに伝わった魔法の飲み物。
出典:FUEGUIA 1833 日本の公式サイトから
濃厚な甘さの中に、不思議な落ち着きを感じさせてくれます。
グルマンを甘ったるいだけ、と嫌厭している方にこそ、ぜひ試していただきたいですね。
ちなみに、公式のスペックでは、ショコアトルはフローラルの香調。
チョコレートとバニラの香りの奥に隠された、花の香りを探してみてください。
今回ご紹介した、ラ・カウティーバとショコアトルは、フエギアのショップで試すことができます。
FUEGUIA 1833 東京本店
〒106-0032
東京都港区六本木6-10-3
グランド ハイアット 東京 1Fロビー内
営業時間 11:00~20:00
TEL 03-3402-1833
公式サイト http://www.fueguia.jp/
グルマンの香り まとめ
香水の世界におけるグルマンノートとは、お菓子・スイーツにヒントを得た、お砂糖やクリーム、スパイスを使った甘い食べ物をイメージした香りのこと。
オリエンタルノートと近いけれど、グルマンノートには甘い食べ物の香りが表現されている。