ラルチザンパフュームの中でも特に変わっていて、一度、嗅いだら忘れることができない奇妙な香り。
残念ながら、現在の日本のラインナップからは外れているのですが、海外ではレギュラー商品として売られており、通常通りに手に入るようです。
夏季休暇を利用して、フランス本国や、アメリカ本土に旅行する方が多くなるこの時期、海外旅行先で現地の香水店に立ち寄る楽しみもありますよね。
また、インターネットでは比較的容易に手に入ります。
そんなわけで、今回はラルチザンパフューム モン ニュメロ10をご紹介したいと思います。
モン ニュメロ10の香りは?
モン ニュメロ10の香りを一言で表現するのはとても難しいです。
敢えて一言で表現するなら、贅沢に木材を使った部屋の中で革張りのソファに腰掛け、ゆったりとお香を炊きながら濃厚なスイーツをいただいている…そんなイメージです。
何とも言えない奇妙な感じ、これまでに嗅いだことのない複雑な香りがします。
奇妙な香りなのに、いちど嗅ぐと忘れられない…クセになる香りです。
この作品について語っていると、それぞれ人によって少しずつ印象が異なるところも面白いです。
まとう人の肌質によって、香りの現れ方が少しずつ違ってくるのだと思います。
共通点はレザーの香り、というところ。
トップノート:ピンクペッパー、シナモン、アルデハイド、フェンネル、カブリューバ(エッセンシャルオイル)、カルダモン
ミドルノート:レザー、インセンス(お香)、ローズ、ゼラニウム、ジャスミン
ベースノート:レザー、トンカビーン、ベンゾイン、シダーウッド、バニラ、ムスク、スタイラックス(エゴノキ)、アンブレイン(アンバーグリス)、ハイラックス、ヘリオトロープ
調香師:ベルトラン・ドゥショフール(Bertrand Duchaufour)
ベルトラン・ドゥショフールらしい複雑な香りというだけあって、たくさんの香料が使われていることがわかります。
モン ニュメロ10のトップノート
トップノートはスパイシーで、弾けるように鋭く、ピンクペッパー、シナモン、フェンネル、そしてカルダモン。
火にくべた乾いた木がはぜる瞬間を思い起こさせます。
ほんのりと甘いような、それでいてすっと鼻に抜けるような・・・。
カブリューバという、南米原産の樹木のエッセンシャルオイルは、ネロリドールというネロリの精油にも入っている成分が多く含まれており、豊かな香りを放ちます。
カブリューバを嗅ぐと、さいきんの私はフエギアを連想してしまいます。
モン ニュメロ10のミドルノート〜ラストノート
スパイシーで賑やかなトップノートから一転、ミドルノートは静かな雰囲気に。
いよいよレザーの出番です。
体温で温まる前は、どことなく冷たい印象、クールな香りに背筋が伸びるようです。
新しい革靴やバッグを使い始める時の、まだ自分の肌に馴染まないあの感じ。
レザーの中に、スモーキーなインセンスが香ります。
やがて肌の上であたたまるに連れて、何年も寝かせたウイスキーが喉を下ってゆく時のような、カラメル様の甘みを持つアンバーノートが広がります。
レザーノートもまた、何度も羽織るうちに自分の身体の一部となったレザージャケットの着心地に、あるいは、ドライバーをすっぽりと包み込むクルマのシートのように、まとう人の肌に馴染みます。
あたたかみのあるラストノートは長く肌に留まります。
持続時間が長く、4〜5時間は香りを感じました。
モン ニュメロ10の2つのイメージ
私がモン ニュメロ10に抱くイメージは、2つあります。
秋から冬のイメージ
まず1つ目は、秋から冬にかけてのイメージです。
ぱちぱちと火が爆ぜる暖炉の前に置かれた、革張りのカウチソファ。
ぬくもりに包まれ、心から安心できるひととき。
ブランデーを混ぜたホットドリンクと共にゆっくりと過ごす、秋の長い夜を思わせてくれます。
真夏のイメージ
続いては、一転して真夏のイメージです。
氷をたくさん浮かべたチェリーコーク・・・。
私の肌の上では、レザーの香りが引き立つ時と、なぜだかチェリーコークのような、ポップな香りが立つことがあります。
あたたかみのあるスパイス類とカラメルが混ざり合いながらも、炭酸飲料のような爽快感があるからでしょうか。
初めは驚きましたが、徐々にこれがクセになりまして、むしろチェリーコークになってくれないかと思いモン ニュメロ10を手にとることもしばしば・・・。
コークっぽい香りが立つ時は、おそらく、いつもよりも私の体温が高い時だと思うのですが・・・
こうなるとメンズフレグランスっぽさは感じず、性別のないユニセックスな香りとしての楽しめます。また、カジュアルなデニムやスニーカースタイルにも合わせやすいというメリットもあります。
2面性がある作品を使い分ける方法
もし、チェリーコークっぽさを出したくないなら、体温の影響を受けにくい部分にまとうようにしています。
たとえば、外くるぶし、足の甲、背中といった具合にです。
全く体温の影響を受けない、というわけではありませんが、脈の部分を外すことができます。
一方、手首や腕の内側、膝のお皿の真裏にまとうと、華やかに香りが立ちやすくなります。
ベルトランの真骨頂
モン ニュメロ10は、フランス語→英語でMy No.10の意味。
唐突にNo.10が出てきたわけではなく、この“数字シリーズ”10番目の作品です。
2011年の発売時、この作品は各国のバーニーズ・ニューヨークのみで販売された貴重な作品です。
しばらくの間は、ラルチザンパフュームの旗艦店でさえ取り扱われませんでした。
2017年の今だからこそですが、モン ニュメロ10は、ベルトランがラルチザンパフュームに残した至高の作品だったのではないだろうか。
私はそう考えています。
この頃のラルチザンパフュームは、新作のほとんどがベルトランの手による作品でもありました。
ラルチザンパフュームとベルトランという、一風変わった他にはない作品を生み出すという共通イメージが合致していたものの、当時は、奇抜さが重視されがちであり、世間の注目もそこにフォーカスされていたようにも思います。
そんな中で、奇妙ながらも人を惹き付けてやまない香り、それがモン ニュメロ10と言えるのでは。
ちなみに数字シリーズの9番目、No.9は、いまでも購入することができます。
ラルチザンパフュームのリニューアルを生き延びた作品でもあります。
モン ニュメロ10のラインナップ
モン ニュメロ10は、オードパルファムのみの作りとなっています。
本体は100mlのスプレーボトルのみです。
インターネット上では、旧ボトルと新ボトルが混在しているようです。