バラの香水なんて、どれも同じようなもの・・・
もし、あなたがそう考えているのなら、一筋縄ではいかない、エキゾチックな作品を試してみてはいかがでしょうか。
背景にあるエピソードもユニーク。
なんと、現代のマハラジャであるガジ・シン二世のために、調香師ベルトラン・ドゥショフールが手がけた作品なのです。
他人とかぶらない、ちょっと変わった香りを探しているあなたには、ぜひ試していただきたい作品、ペンハリガンのヴァーラを取り上げてみたいと思います。
ヴァーラの由来は?
インドの地方都市、ジョードプルは、ガジ・シン二世が夏の間に過ごすサマーハウスがある観光地の一つです。
砂漠の入り口にあるこの街では、旧市街の外壁が青く塗られており、ブルーシティという愛称で呼ばれることも。
ちなみにヴァーラという作品名は、マハラジャの孫娘の名前なのだそうです。
街やお城の名前でもなければ、恋人や妻の名前でもなく、孫娘というところがポイントですよね。
欧米でバラの香水と言えば、恋人への愛を象徴する作品、というイメージ。
ところがペンハリガンのヴァーラは、家族愛が根底にある作品なんですね。
それを知った上で香りを試してみると、なぜだか、エキゾチックな作風の中に込められた深い愛情を感じます。
ヴァーラはどんな香り?
ヘッドノート:マルメロの実、ローズウォーター、キャロットシード、コリアンダー、サフラン
ハートノート:モロッカンローズアブソリュート、ブルガリアンローズオイル、フリージア、インディアンマグノリア、ピオニー、アイリス
ベースノート:ハチミツ、ホワイトムスク、シダーウッド、サンダルウッド、松やに、トンカビーン
調香師:ベルトラン・ドゥショフール(Bertrand Duchaufour)
スパイスとフローラルブーケ、ウッディーノートが混じり合う、複雑でエキゾチックな香りです。
メインはバラの花だけれど、○○系、と言い切ってしまうにはためらってしまう・・・そんな、色々な表情を持った作品です。
香りが変わってゆくタイプのフレグランスが苦手な方は、まずは自分の肌で試してみるといいでしょう。
つけたてからドライダウンまでの香りの変化もドラマティックです。
ベルトランらしい意外性のあるストーリーを楽しむことができます。
つけたての香りは、インドを思わせるエキゾチックなスパイスが立ち上ります。
その中に混じった甘いフルーティーな香りは、マルメロの実。これも中央アジア原産の植物です。
やがて、マハラジャが夏を過ごす宮殿の庭に咲く、花々が香り立ちます。
バラやマグノリア、ピオニー、マグノリア・・・
香り高い花々が詰め込まれた、贅沢なハートノートです。
中でもこだわっているのがバラ。
バラはバラでも、モロッカンローズとブルガリアンローズ、異なる種類のバラの、それぞれアブソリュートとオイルが使われています。
作品のメインであるバラの香りを多面的に表現しようとする、調香のこだわりを感じさせます。
ラストノートは、ウッディー系に加えて、ハチミツやトンカビーンが奏でる優しい甘みのある雰囲気に。
夏の夕暮れ、ジョードブルの旧市街を取り囲む城壁が夕陽で赤く染まっている・・・そんなひと時をイメージさせてくれます。
ヴァーラは女性向け?
ペンハリガンのヴァーラは、一般的には女性向けのフレグランスとされています。
ラストノートでは、サンダルウッドなどウッディー系の特徴が強く出てきますが、男性用フレグランスにありがちな重厚な雰囲気にはなりません。
ハチミツなど、まったりと甘い香料も入っているものの、グルマン系のようにウォーミーな甘さではなく、意外にもさわやかです。
インドそのものが大変暑い気候ですから、ヨーロッパの冬に合うような甘さでは合いません。
スパイスを効かせたチャイのような、甘さの中にスッキリとした感覚が残るように感じました。
甘すぎないので男性がまとっても素敵な香りだと思いますし、女性がまとえば、大人っぽくスタイリッシュな印象を与えることができそうです。
恋愛モードのバラ香水ではなく、香水ファンをうならせるようなバラのフレグランスだと思います。
ヴァーラのラインナップ
ヴァーラ オードパルファム
ヴァーラはオードパルファムのみの作りとなっています。オードトワレはありません。
ゆっくりと香りの変化を楽しませながら、4〜5時間ほどは香りが持続します。
エキゾチックな香りですが、昼間に合う明るい雰囲気が特徴です。
ペンハリガン ヴァーラ シャワークリーム
取り扱い数は多くありませんが、シャワークリームも作られています。
ヴァーラをまとう前のバスタイムで使い、香りをレイヤリングしても美しいですね。
また特徴のある香りなので、バスタイムだけで楽しんでみても贅沢です。
インドのマハラジャ気分に浸れるかも?!
個人的には、夏の日の自分へのご褒美に使いたいなと思いました。