まだまだ汗ばむ日々が続きますが、朝晩のひんやりとした風を感じる時、秋の訪れに心がキュッと動いてしまうこのごろ。
今朝、ビルの間から覗く空の青がより高く、雲が柔らかく散るのを見た瞬間に、寂しい気持ちになりました。
もう、夏は行ってしまったんだ、と。
どんな香りをまとおうか、と戸棚を開けた時の気持ちは、秋を待ち遠しく思っていた真夏の頃とは少し違ってきました。
私が秋に求めたくなるのは、ぬくもりのある木の香り。
今回は、ラルチザンパフュームのメシャン ルー(いじわるオオカミ)をご紹介します。
メシャンルーの意味は?
メシャンルーは、日本では「いじわるオオカミ」と呼ばれることもあります。
ラルチザンパフュームの以前からの作品の中には、「ちょうちょをつかまえて」のように詩的な和名を持っている作品もいくつか残っていますが、メシャンルーは仏和訳のほぼ直訳です。
MÉCHANT(メシャン)は、「いじわる(形容詞)」、LOUP(ルー)は「オオカミ」です。
ところがLOUPには、機械的な翻訳では現れない、ちょっと捻っている意味が2つあります。
1つ目には、LOUPを話し言葉で子どもや恋人の愛称(呼びかけ)として使うことがあるというもの。
ピンと来ましたか? そう言い合えるふたりは、きっとラブラブですよね(笑)
そういう親子関係も、フランスらしくて微笑ましいです。
2つ目には、野心家という意味。
動物としてのオオカミを指し示すだけでなく、フランスらしい暗示的な意味もはらんだ、どちらかというと恋愛をにおわせる作品を意識してしまいます。
メシャンルーの香りは?
メシャンルーの香りは、どんな香りなのでしょうか?
オオカミだから、アニマリックノート?
いいえ、意外にもアニマリックな香料は感じません。
メシャンルーは、森を思わせるウッディーノートに、クセのあるスパイスを散りばめたユニークな調香です。
ヘッドノート:ペッパー、甘草
ハートノート:クリ、ハシバミ(ヘーゼルナッツ)、ハシバミの木
ベースノート:ハニー、トンカビーン、ミルラ、シダーウッド、ガヤックウッド
調香師:ベルトラン・ドゥショフール(Bertrand Duchaufour)
※レシピは2017年8月27日現在のラルチザンパフューム公式サイトを参考にしました。
つけたての瞬間は、グルマンノートの展開を予測したくなるスパイシーなトップノートです。
ところが、メシャンルーは香水を分類した時のメインカテゴリにグルマンノート、と標榜するほどには甘くなることはありません。
トップのスパイスが落ち着くと、乾燥したハーブのような、じんわりとした甘みが出てきます。これが甘草です。
グルマンっぽいウッディーノートを期待してまとうと、意外な展開にきっと驚くと思います。
ハートノートにはクリとありますが、マロン系のお菓子のまったりとした雰囲気はなく、熟し切る前の栗の実や、自然に落ちた栗のイガの香りに似ています。
栗の林を歩いたことがある人には、秋を感じさせる作品になるでしょう。
薬草っぽい甘草に合わせて、ヘーゼルナッツ、トンカビーン、ミルラといったややクセのある香料が重なります。
一筋縄ではいかない、いじわるなカレといったところでしょうね。
ベースのシダーウッド、ガヤックウッドはよくあるウッディー系の香料だけれど、これだけユニークな調香を重ねているので、他人とかぶりにくい作品に仕上がっています。
メシャンルーは男性向けの作品なの?
メシャンルーは、男性向けの作品として勧められることが多い作品ながらも、女性が使ってもアリ、の作品です。
お花やフルーツの香りを使っていない分、男性的なイメージにハマりそうでいて、意外とそうでもない・・・
それぞれの性の特徴を強調する作品ではなく、境目を曖昧にするような働きを持つ作品の一つだと思います。こういう作品、ラルチザンは得意ですよね。
ラルチザンパフュームが意図した「いじわるオオカミ」は完全に男性が使う意図でのネーミングですが、トム・フォードやハイファッションブランドのメンズラインのような香り方はしません。
いじわるオオカミ、はワイルドな男性ではなく、茶目っ気のある、チャーミングな男性をイメージしたのかも!
男性がまとうなら、タイを締めて、ジャケットを羽織るきっちりとしたファッションよりも、自分流のスタイルに合いそうなカジュアル感もあるメシャンルー。
女性から男性へのプレゼントにも素敵です。
また、女性がまとうなら、辛口スタイルに合わせて、メイクもクールに決めてみては? 香りにぬくもりがあるため、絶妙なバランス感が生まれますよ。
調香変更について
今回、レビューを書くために久しぶりにメシャンルーと向き合ってみて、気がついたことがありました。
それは、調香変更です。
以前とは少しだけ、香りが変わったような・・・全体の雰囲気は同じなのですが。
レビューを読んでみると、サンダルウッドについて言及しているものがあるにも関わらず、現在の公式サイトの記述にはありません(日本語版、英語版、仏語版いずれも。2017年8月27日時点)
ラルチザンパフュームのブランドリニューアルの際(現在の黒っぽいフラコンに変わった時)、調香変更があった可能性があります。
全体の雰囲気はほぼほぼ同じですので、さほど気にしなくとも良いと思いますが、以前のレシピをご存知の方は気がつくかもしれませんね。
男性と女性での香り立ちに違いが?
ラルチザンパフュームの公式サイトでも、男性と女性で香り方に違いが出るという記述が見られました。
私は女性ですが、グルマンっぽい展開にはならず、スパイスと甘草がかなり持続したウッディーノートを楽しむことができました。
体温だけでなく、その人が持っているユニークな体臭や肌の匂い、ホルモンにも影響を受けるのかもしれませんね。
香りの強さは?
メシャンルーはオードトワレとしての作りです。
一般的に、オードトワレの香りの持続は3〜4時間と言われている中では、かなり持ちの良い作品でした。
私の肌の上では5時間は香りを感じることができたのです。
全体的に香りは強め、ガヤックウッドが入っている作品ということもあり、サイレージは長めです。
体温が高い方は、甘い香りはパッと飛んでしまうかもしれません。
それでも香りがなくなってしまうのではなく、甘草やハシバミ、ミルラの特徴ある香りを引きながら、ウッディーノートが細く長く続いていると思います。
体温が高い方のほうが変化を楽しめる作品だと思います。
体温が低い方は、体幹部や脈打つ位置にスプレーしてみると良いですよ。
メシャンルーのラインナップ
メシャンルーは、オードトワレのみの作りとなっています。