シトラスの香調とは?
日本人にとって、最も身近な香調が「シトラス」かもしれません。
冬の定番「みかん」や「ゆず」、「はっさく」や「あまなつ」など、食べて美味しいオレンジの仲間たち。
揚げ物にレモン汁を掛けたり、お酒にレモンやライム果汁が入っているなど、あらゆる食事・お酒のお供として欠かせない「レモン」も、トップノートに使われることが多い素材です。
柑橘類の香りは、香水の世界では「シトラス系」という一角を成しており、私たちの食卓以外でも欠かせない存在です。
また、アロマテラピーの世界でも、柑橘類の精油は多くの種類が使われています。
香水に使われる場合でも、アロマテラピーの場合でも、シトラスの仲間は、爽快感やリフレッシュ効果が目的で採用されることが多いようです。
シトラス系の香りは爽やかさや軽快感だけでなく、ほかの調香と組み合わせることで、香りに変化を付けることができるので、決してライト感覚なだけの香りではありません。
オレンジジュースのような果汁感は続かない?
シトラス系フレグランスの多くが、意外にも香りの変化やストーリー性を持っていることに気が付きます。
シトラス系の香り=元気なイメージ、という単純な作品はそう多くないようです。
実は、これは柑橘系の香りそのものの宿命でもあるのです。
切ってからしばらく経ってしまったレモンのパンチが弱く感じられるように、柑橘系の成分は揮発性が高く、これを長持ちさせるのは困難です。
フレグランスとしてのシトラスの香りも同様です。
柑橘系の香りの魅力は、果汁が持つみずみずしさであり、弾けるようにジューシーな「動」の香りです。
シトラス系の香りの魅力を最も強く引き立てるために、調香師たちはこれをトップノートに用いるのです。その後、同じシトラス系の花や樹木の香りを組み合わせたり、ほかの素材とアレンジすることでストーリーを描き、一つの作品として仕上げます。
このような背景から、シトラス系の香りはつけたての瞬間を楽しんだり、作品全体の持続時間が短いコロンやオードトワレとして楽しむと良いでしょう。
シトラス系の代表フレグランス
サンタ・マリア・ノヴェッラ オレンジフラワー
フレグランス好きの間では有名な「世界最古の薬局」と呼び習わされるサンタ・マリア・ノヴェッラ。
こちらでは、オレンジを巧みに表現したオレンジフラワーという女性向けフレグランスが作られています。
トップノートでみずみずしく表現されるオレンジとやや苦味のあるベルガモットの果汁感は、まさに地中海の市場に並ぶオレンジ売り場を彷彿とさせます。
フレグランスが肌の上であたたまると、オレンジフラワーというネーミングの通り、オレンジの花が華やかに花開き始めます。
最後はしっとりと落ち着いたシプレー系へ。
シトラス系特有の元気いっぱい!というイメージではなく、大人の女性にもふさわしい上質な作品に仕上がっています。
ジョー マローン ロンドン オレンジ ブロッサム コロン
重ね付け派におすすめしたいのは、ジョーマローンのオレンジブロッサムコロン。
もちろん単品で用いても充分に楽しめます。
手持ちのフレグランスにオレンジブロッサムコロンをプラスすると、春・夏向けのアレンジに早変わりするように感じます。
ネロリの表現が美しく、また香りもそれほど強くはありません。
オレンジジュースのような果汁感とは異なりますが、現代的で洗練されたシトラス系を探しているなら試してみて損のない作品の一つです。
ロジェガレ オレンジパフューム ウォーター
ロジェガレから、誰でも手軽に楽しめる「パフュームウォーター」として発売されているのがオレンジパフュームウォーターです。(香りの強さはオーデコロンの扱い)
スペインのアルハンブラ宮殿でオレンジが実る庭にインスパイアされ、生まれた香りとされています。
柑橘系の樹木は、そばに寄ると樹木そのものからも果実であるオレンジのような香りがするものです。不思議と居心地のいい香りですよ。
この作品はまさにそれをうまく表現しており、オレンジ果汁の香りというよりも、ウッド系として成立する珍しい仕上がりです。
ちなみに元々の名称は「BOIS D’ORANGE(ボワ ドランジュ)」、フランス語でオレンジの木という意味です。
同系列のシャワージェルやハンドクリームなどと併せてレイヤリングを楽しむこともできます。
バーバリー ウィークエンド フォー ウーマン
バーバリーのロングセラーアイテム、ウィークエンドは、男性版と女性版のカップルフレグランスです。
イギリスの果樹園をお散歩している週末をコンセプトにしている通り、オレンジの果実や花、樹木といった香りが表現された作品となっています。
太陽がきらめく昼間のイメージにぴったりの、前向きな気分になれるフレグランスです。
またバーバリーらしく上品さも特徴の一つ。「夜っぽい雰囲気の香り」が苦手な方には、ぜひお試しいただきたい作品の一つです。
ディオール オーソバージュ EAU SAUVAGE
ディオールのオーソバージュはメンズフレグランスですが、密かに愛用しているという女性も少なくないのでは。
フレッシュさの中に苦味を感じるベルガモットが弾けるトップノート。
オーソバージュは「野生の水」という意味ですが、力強さよりもしなやかさ、タフな男性らしさよりもどこか中性的な印象を感じさせるのはシプレーの風味だと思います。
1966年の発売から、色褪せることなく爽やかなイメージを保ち続けているディオールのベストセラーフレグランスの一つです。
ロクシタン シトラス ヴァーベナ Citrus Verbena
ロクシタンから、毎年夏季限定で発売しているサマーフレグランス「シトラスヴァーベナ」は、まさに夏にピッタリのフレグランスです。
グレープフルーツを中心に感じるトップノートは、まさにジューシー。
甘さと苦味のバランスが程よく、日本の真夏の暑さを吹き飛ばしてくれそうです。
シャワージェル、ボディクリームやヘアミストなど、シトラスヴァーベナシリーズとして複数アイテムが展開されていますが、いずれも夏季のみ取り扱い、且つ数量限定となっています。私のおすすめアイテムはヘアミストです。
ちなみにヴァーベナはレモンのような香りがするハーブの一種で、ロクシタンではフレグランス以外にも様々なスキンケアアイテムに用いられています。
ディプティック オーデサンス オードトワレ
他人とかぶらないシトラス系を探している人には、ディプティックのオーデサンスをおすすめします。
果実感たっぷりのジューシーなフレグランスでありながらも、オレンジの花やアンジェリカなどのアロマティックな素材の組み合わせがユニークです。
ありそうでなかった、洗練されたシトラス系フレグランスならオーデサンスです。
ディプティック オイエド オードトワレ
ディプティックから柑橘系の香りをもう一つ紹介するなら、オイエドです。
オーデサンスよりも果実感が感じられるオイエドは、オレンジそのものよりもユズをイメージさせる香りです。
やや苦味のある青っぽいジュースは、シトラス系でありながらもしっとりとした魅力を与えてくれます。
アニック グタール オーダドリアン オードトワレ
アニック グタールのシトラス系、オーダドリアンは、オードトワレ版がフレッシュなシトラス感を楽しめる作品です。
オードパルファム版の立体感も素晴らしいのですが、柑橘系のジューシーさにフォーカスするならオードトワレ版がおすすめです。